「AIエージェントに現場のコードを任せたら、誰がどの端末から操作したのか分からなくなるのでは」——社内のコードや顧客データを扱う中小企業ほど、この不安は根強い。Claude Code自身が、この不安に正面から答える機能をベータで出してきたので紹介したい。

Remote Controlは「ローカルで動いているセッションへの窓」

Claude Codeには、パソコンで動かしているセッションをスマホやブラウザから続けて操作できる「Remote Control」という機能がある。公式ドキュメントによれば、claude remote-controlを実行するとローカルのマシン上でセッションが動き続けたまま、claude.ai/codeやClaude Codeのモバイルアプリから同じセッションに接続できる仕組みだ。コード実行とファイルシステムへのアクセスはあくまで手元のマシン側に留まり、モバイル・ブラウザ側は「窓」として振る舞う——クラウド上でセッションそのものを実行する「Claude Code on the web」とは、この点で明確に区別されている。

Remote Control自体はPro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使え、Team・Enterpriseでは管理者が管理コンソールでトグルを有効化するまでオフになっている。

「サインインしていれば誰でも操作できる」状態への備え

ここで新たに追加されたのが「Trusted Devices」だ。現在ベータで、Team・Enterpriseプランのみが対象、こちらも既定はオフで管理者が有効化する組織全体の設定になっている。

有効化すると、Remote Controlセッションを閲覧・操作する前に、次の2つが両方とも必要になる。

生体情報の扱いも明記されている。指紋・顔データといった生体情報そのものはデバイス上のOS機構で完結し、Anthropic側には一切送信・保存されない。保存されるのは端末の公開鍵と、表示名・プラットフォーム・登録日時といったメタデータのみだ。

適用範囲にも限度がある。設定を有効化した後に新規に開始したRemote Controlセッションのみが対象で、有効化前から動いていたセッションは終了するまで保護の対象外になる。チーム単位・プロジェクト単位で適用範囲を絞ることも、現時点ではできない。対象はあくまでRemote Controlに限られ、通常のClaude利用やターミナル上のClaude Code、API経由の利用には影響しない。

中小企業にとっての意味——機能そのものより「設計の考え方」

この機能で押さえておきたいのは、個々の仕様よりも、Anthropicが何を課題として設定したかという点だ。AIエージェントの操作面がパソコンからスマホ・ブラウザへと広がるほど、「サインインさえしていれば、どの端末からでも本番の作業に手が届いてしまう」状態が生まれる。Trusted Devicesは、この状態に対して「端末を紐付ける」「直近の本人確認を求める」という、ごく標準的なゼロトラスト的発想の統制を後から足したものだ。

中小企業が導入時に確認すべきことは、機能の存在を知ることそのものではなく、次の3点に近い。

これは以前の記事で扱った「確認ダイアログが無告知で自動継続していた」件とも通じる話だ。ベンダー側が安全側の機能を用意しても、それをいつ・どう使うかを決めるのは自社側の役割であり、そこを丸投げにしないための設計こそがハーネスの考え方である。

AIエージェントの操作面がどこまで広がっても、「誰が・どの端末から・何に触れられるか」を自社の言葉で線引きできているか。この整理はパイロット・構築のフェーズで扱うテーマであり、自社の運用でどこを固定すべきか相談したい場合は30分の無料診断で持ち込んでほしい。