Claude Codeに、クラウドセッション(claude.aiやスマホ・PCアプリ、ターミナルのclaude --cloud、定期実行の routine などから始めるセッション)を自社インフラの上で実行できる「Self-hosted environments」が、2026年8月6日にパブリックベータで公開された。対象はTeam・Enterpriseプランで、既定はオフ。公式ドキュメントを直接確認したところ、中小企業のSI・受託開発企業が気にする「顧客のコードや環境をベンダーに渡さずに済むか」という論点に関わる、正確に読む必要のある機能だった。

何が変わるのか

通常、Claude CodeのクラウドセッションはAnthropicのインフラ上で実行される。Self-hosted environmentsを使うと、この実行場所を自社が用意した「runner」(自社のCIランナーと同じ発想のプログラム)に移せる。開発者がセッションを開始する画面に、Anthropicホスト型と並んで自社の環境が選択肢として表示され、選ぶとそのセッションは自社ネットワークの中で動く。

ネットワーク経路は一方向だけだ。runnerからAnthropic側(api.anthropic.com)への outbound HTTPS 通信のみで、Anthropicから自社ネットワークへの接続は発生しない。公式ドキュメントは「リポジトリのチェックアウト・ビルド成果物・シークレット・セッションが作成・変更したファイルは、自社が用意したマシンに残る」と明記している。

ただし、会話の内容はAnthropicに送られる

ここが最も見落とされやすい点だ。同じ公式ドキュメントは続けて次のように書いている。

Session content still goes to api.anthropic.com for model inference.

モデルへの推論はAnthropicのAPIを使う仕組みのままなので、プロンプト・レスポンス・ツール実行結果といった会話の内容は、これまでと同様にAnthropicへ送信される。「セルフホスト」という言葉から「全部が自社に閉じる」と考えると誤解になる。自社に残るのはコードの実行環境であり、モデルとのやりとりそのものは変わらない。この機能はBedrock・Google Cloud・Microsoft Foundryといった別ルートでの推論やLLMゲートウェイの利用にも対応しておらず、Zero Data Retention(ゼロデータ保持)設定の組織では使えない。

セキュリティ強化の中身も運用者の仕事

公式ドキュメントの「本番投入前にやるべきこと」の項目には、以下のような実務がそのまま並んでいる。

そのうえで公式ドキュメントは「セッションへのディスパッチは組織全体に開かれており、環境単位のアクセス制御はない。組織内の誰でも、どの環境にもセッションを送れる前提で、runnerホストには組織内の誰にも読まれてよくないデータや認証情報を置かない」とも明記している。

誰向けの機能なのか

公式ドキュメント自身が対象を絞り込んでいる。

Most teams are better served by Anthropic-hosted environments, which need no infrastructure to run or maintain. Self-hosting is for teams whose network, tooling, or compliance requirements call for keeping session execution on infrastructure they control.

要約すると「ほとんどのチームはAnthropicホスト型のままでよい。ネットワーク・ツール・コンプライアンス要件から実行環境を自社で持つ必要があるチーム向け」ということだ。ランナーイメージの構築・保守、フリートの運用、ネットワーク制御といった運用負荷を負うのが前提になる。

中小企業として何を持ち帰るべきか

  1. 「セルフホスト対応」という言葉だけで安心しない:ベンダーの新機能が「自社インフラで動く」と聞くと安心しがちだが、どこまでが自社に残り、どこから先がベンダーに渡るのかを一次情報で確認する。今回のケースでは、コード実行は自社に残るが、モデルとの会話内容は変わらずAnthropicに送られる
  2. 導入する場合は運用コストも見積もる:ベータの現時点ではTeam・Enterpriseプラン限定で、ランナーの構築・監視・ネットワーク設計を自社で担う必要がある。パイロット段階の中小企業がすぐに必要になる機能ではない
  3. 「顧客コードを外に出せない」という要件がある場合の選択肢として覚えておく:受託開発で顧客からセキュリティ上の制約を求められるケースでは、少なくとも「コードの実行場所を自社で選べる」という選択肢が存在すること自体は交渉材料になる

Claude Codeのセキュリティに関する既存記事ではauto modeによるterraform destroyの遮断承認プロンプト自体の信頼性を取り上げてきた。今回のセルフホスト環境は、それらとは異なる「実行場所そのものの選択肢」という切り口だが、共通しているのは「ベンダーが用意した仕組みの範囲を正確に把握してから使う」という姿勢だ。これもハーネスの考え方の一部だと考えている。

自社の要件でどこまで自社インフラに寄せるべきか、どこはベンダー任せにしてよいかを整理したい場合は、パイロット・構築のフェーズで一緒に詰められる。まずは30分の無料診断から相談してほしい。