AIコーディングツールの導入コストを検討するとき、多くの企業はまず「1人あたり月額いくらか」を見る。だが、実際に会話を1つも始めていない段階で、すでに数万トークンが消費されているとしたらどうだろうか。

会話が始まる前に消えているトークン

AIコンサルティング企業Systimaが2026年7月、Claude CodeとオープンソースのOpenCodeを対象にトークン消費量を実測した。特定バージョンの組み合わせ(Claude Code 2.1.207、OpenCode 1.17.18)を1台のマシン上で動かし、58通りの条件・273件のリクエストを記録するという方法で行われている。

報道されている結果はこうだ。Claude Codeはユーザーが最初の指示を入力する前の時点で、システムプロンプトとツール定義だけで約3万3000トークンを消費している。ここにMCPサーバーや指示ファイル(CLAUDE.md等)が加わると、初期消費量は約7万5000トークンまで膨らむ——これは200,000トークンのコンテキストウィンドウの37.5%にあたる。比較対象のOpenCodeは同条件で約6900トークンで、その差はおよそ4.7倍にのぼる。差の大部分はツール定義の記述量によるもので、Claude Codeが標準で持つ27個のツールの説明文だけで約2万4000トークンを占めるという。

この数字を見て「だからOpenCodeの方が優れている」と結論づけるのは早計だ。研究チーム自身が、この結果は特定のマシン・特定のバージョンの組み合わせで得られた一時点のスナップショットに過ぎず、両ツールとも頻繁に更新されるため比率は変わりうると注記している。

なお、Systima本体のブログ記事にはこのセッションから直接アクセスできなかった。上記の数字は、測定手法・対象バージョン・調査時期を確認できた研究チームの公開リポジトリと、この結果を独立に報じた複数の海外メディアの記述が一致する範囲でまとめている。

なぜ中小企業にとって見落とせないのか

Claude Codeを座席制のプラン(Pro/Max/Team/Enterprise)で使っている場合、この初期消費量は月額料金の中に埋もれて見えにくい。だが、APIやConsole経由で従量課金にしている場合、あるいは座席プランでも利用上限に早く到達して困っている場合は話が別だ。「何も指示していないのに毎回数万トークンが引かれている」という構造は、そのまま月々の請求額や上限到達の速さに跳ね返る。

ここで重要なのは、この初期消費量が固定値ではないという点だ。Anthropic公式のコスト管理ドキュメントによれば、接続しているMCPサーバーの数や、CLAUDE.mdに書き込んだ指示の分量が、そのまま会話開始前のトークン消費量を左右する。つまり「使い方が上手い・下手」の問題ではなく、「導入時にどう構成したか」という設計の問題だということだ。

Anthropic自身が勧めている対策

同ドキュメントには、トークン消費を抑えるための具体的な手段がいくつも挙げられている。

同ドキュメントはコスト管理の進め方として「まず小規模なパイロットグループから始め、これらの追跡ツールでベースラインを把握してから全社展開する」ことを勧めている。これは診断・パイロットという段階を踏んでからハーネスを積み上げていく進め方と同じ考え方だ。

「構成」を個人任せにしない

ここで起きていることは、セキュリティで繰り返し見てきた構図とよく似ている。エージェントに何を許可するかをベンダーの既定値に委ねず自社で確認する必要があるのと同じように、エージェントにどれだけのMCPサーバー・スキル・プラグインを常時接続させるかも、導入した個人の裁量に任せきりにすると気づかないうちにコストが積み上がる。

パイロット導入の段階で、接続するMCPサーバーの棚卸しと/usageによるベースライン計測をセットで行い、それを標準の導入手順として文書化しておく。これも、属人的な「使い方の工夫」ではなく組織の構造として残すという、ハーネスの発想そのものだ。


AI導入の効果を数字で管理する仕組みについてはこちらの記事でも紹介している。自社の導入をどの段階から始めるべきか整理したい場合は、30分の無料診断から相談できる。